コロジオンプロセスとは
About Collodion Process
コロジオンをしいたガラス原板を硝酸銀に浸し、ぬれているうちに撮影し現像をする手法、コロジオン・プロセス(湿板写真)について説明します。
(東京都写真美術館で行われたワークショップを元に作成しました。)
ガラス湿板原版の作成
1. ガラス洗い
角とふちを落とした透明なガラス板を、ナイロンブラシに沈降性炭酸石灰(炭酸カルシウム)をつけて、ガラスの表・裏をよく洗い水洗する。(水をかけてもはじかない位よく洗う。)次にその水が乾かないうちに直ちに下引きを行う。
2. 下引き
膜がはがれないように下引きを行う。
下引き:乾燥卵白4g、氷酢酸1cc、水1000cc
乾燥卵白に水を加え一晩静置。強くかきまぜ泡立て、氷酢酸を加えて20-30分静置した後、濾過して使用する。 1のガラス水洗が終わったら、濡れているうちにすぐ表面のみ2,3回流しかけて(右上→左上→下方)、膜面を手前にしてラックで乾燥させる。
3. ヨード・コロジオン感光液を作る
コロジオン(硝化綿(ニトロセルローズ)をアルコールとエーテルで溶解したもの。)3%溶液にヨード剤を加えて作る。これを冷暗所で保存し、2-3日のうちに使用する。はじめ淡黄色だが、熟成するにしたがい赤味が増し、コントラストが高く反応する感光液となる。
4. ヨード・コロジオンをガラスに引く
静かに、右上→左上→左下→右下へとまんべんなく流動させ、右下から余分な液をビンに戻す。指で軽く諮問がつく位の生乾きの状態(ゼリー状)のときに次の浴銀に移る。(写真1)
5. 硝酸銀を作る
硝酸銀液:蒸留水1000cc、硝酸銀(写真用)100g、沃度カリ(1%液)25cc、硝酸1-2滴
⇒透明ガラス瓶に入れる
水道水は塩素が作用して塩化銀を生じ白濁するので使用しない。
6. 浴銀(感光性付与)
バットにたっぷり入れた銀液(5)に、ヨード・コロジオンを引いた板を静かに底に置き浸す。2-3回バットを振っておく。(写真2)
⇒約1分半後、銀液より引き上げ、しばらく厚紙などの上に立てかけて滴を切り、撮影に入る。
(写真1) コロジオンを引いてます
(写真2) コロジオンが満遍なく行き渡ったら、銀のバットで浴銀を行います
7. 撮影
8×10のカメラを使うため、5×7(大カビネ)のガラス湿板を撮影できるように中枠を作り細工をする。露光はレンズキャップの開閉で行う。
撮影DATA:
8×10ビューカメラ レンズf300mm、タングステン1kwx5灯
【 露光 】キャップにて 【 ASA感度 】0.5~1.0 【 露光時間 】20秒
8. 現像
硫酸第一鉄を主成分とする現像液を板の表に流しかけて現像。板を水平に持って、一気に液をかけ、円を描くように液を流動させる。すると像がすぐに浮かび上がってくるので、20-30秒後水道水をかけて現像を停止させる。
9. 定着
チオ硫酸ソーダ(ハイポ)の約20%水溶液に塩化アンモンを2-5%加えた定着液に、水洗の終わった板をこの中に浸すと、 5-10分程で白色の沃化銀は溶解して、銀以外の部分は透明になる。(かつては青酸カリを使用していた。)
10. 水洗~乾燥
定着後、よく水洗して膜面保護のためゼラチン1%溶液をかけ流して、ラックに掛けて乾燥させる。(写真3)
★この湿板写真は、フィルムに代わる戦後の昭和40年頃まで、婦人雑誌の表紙や映画ポスターなどにも使用されていた。
(写真3) ラックで乾燥
(写真4) 人工着色された湿板写真。
つばも飛ばせないので、近くで見るときは口に手を当てて
鶏卵紙の作成
鶏卵紙の作成から焼付けまで
鶏卵紙(アルビューメン プリント Albumen Prints)は19世紀半ばから今世紀初頭まで長い間使われてきました。コロジオン湿板ネガと密着し、太陽光で焼き付けると、水洗と定着だけで印画が出来る、現像のいらない印画紙です。最盛期には一つの工場で年間600万個の卵が使われたといいます。 今回使用した紙は、合紙(TSPスピロン)、PPC。和紙、炭紙でも良い(らしい。)
1. 鶏卵紙の作成
卵白液:卵白300ml(卵約10個)、食塩7g、水100cc
卵白だけを取り出してビーカーに移す。これに食塩と精製水を加え、泡立てずにかきまぜ、流動性の良い卵白液にする。(古い卵の方がムラになりにくく、かきまぜやすい。)20-30分放置後、ガーゼでこしてバットに入れる。
ガラス棒を一本バットに沈ませておき、その下に神を通すと均一に塗布しやすい。気泡はティッシュで随時取り除く。 (写真5)
その後、ロープに干して乾燥させる。下部にたまる卵白液はティッシュでこまめに拭き取る。乾燥後はアイロン/ドライマウントでしわをのばす。(写真6)
★冷暗所であれば、卵白紙は長期保存が可能
(写真5) 気泡をこまめにとりのぞきます
(写真6) 下部にたまる卵白もこまめに吸い取ります
2. 感光紙の作成(暗室)
感光液:精製水100ml、硝酸銀10g、食酢小さじ1杯
ハケを使って縦横にやさしく動かし、紙上に液がたまるくらい、数回に分けてむらなくたっぷりと感光液を卵白紙に塗布する。(写真7)
上下左右に液を回して均一にし、残りはビーカーに捨てる。(写真8)
フチは残して、裏面に液が回らないように。その後ロープに吊るして干し、乾燥する。
(写真7) 傷つけないようにそっと
(写真8) たっぷりと。少なすぎてもダメ
焼付け~水洗・乾燥
鶏卵紙の作成から焼付けまで
3. 焼付け
感光紙とネガを密着させ(写真9)、太陽光などで焼付けをする。(写真10)
晴天:10分、曇天:10-15分、ブラックライト:10分(写真11)、メタルハライド:4分(写真12)
天候や季節、時間帯、感光液の塗り方などによって焼き付け時間は変化する。
★鶏卵紙の画像は定着すると濃度が低下するので、濃い目に焼き付けておく。
(写真9) ゴムバンドでガッチリ留めます
(写真10 )屋上にて。さむーい
(写真11) 日焼けサロンなんかでも使われます。曇り程度の光量
(写真12) メタルハライド。かなり強い光です
4. 水現像(水洗)
バットで白濁がなくなるまで水洗する。(1-2分)
5. 定着
定着液:精製水800ml、チオ硫酸ナトリウム200g
約10分。定着液につけると色が薄くなるが、乾燥すると元に戻る。
6. 水洗~乾燥
流水で30-60分水洗。水洗後、陰干しで吊るす。アイロン・ドライマウントでしわをのばす。(写真13)
(写真13) みんなでアイロンがけ
(写真14) 20秒びくとも動かないのは難しい!当時のモデルに頭が下がります